宝生家の宝食なる日々〜第3話 (3-26)仁と透とダイヤモンド
「透、今日は、ここで失礼する。ムーランさんところに寄ってケーキを買って自宅に帰る」
仁は、透の自転車に並走しながらこう叫んだ。
「おう、お疲れさん」
と言いながら透は自転車のスピードを上げ、国道176号方面に向かった。
仁は、豊中第一中学校裏門の急坂をブレーキをかけながら、通称「崖下通り」に向かった。「パティスリー J.L ムーラン」は、その通り沿いにある。
「あっ、宝生さん、いらっしゃいませ」
笑顔でムーランが厨房から出てきた。
オーナーシェフのムーランは、フランス人だが、日本語がペラペラだ。永年にわたり「辻調理師専門学校」でフランス菓子の作り方を生徒に教えてきたからだ。しかも夫人は日本人だ。仁は、開店当時からの常連で、5年間ここでケーキを買っている。また、あることでムーランと親しく名前を呼びあう仲になった。ここでは、そのことにはふれないでおく。
「宝生さん、ちょうどよかった。新作の焼き菓子があります。よかったら、いかがですか」
続く。
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