宝生家の宝食なる日々〜第3話 (3-24)仁と透とダイヤモンド
「今後、GIAの方針がどう変わるか、変わらないか予測できないが、今後新しい若手のGGが減ってゆくのは確実やな」
仁は、オープンカフェ「MAHOT(マホット)」で取り扱うようになったオーガニック板チョコレートを無造作に割り、それをかじり、コーヒーを口に含んだ。熱いコーヒーでチョコレートを少し溶かしながら、チョコレートを噛み砕いている。
「俺のようなロートルのGGを含め、日本には、3500人のGGがいると言われている。そのうち、ジュエリー業界で現役で何人働いているかわからんが、今の業界規模にしては多すぎるかもな。業界が最盛期のころ、御徒町で石を投げるとGGに当たると笑い話にしていた」
仁は、昔のことを思い出しながら、苦笑いしている。
「それに、GG資格取得にはかなりお金がかかる」透は、現実派で堅実な性格だ。仁が大学を卒業して、GG資格取得を目指すことを透に言ったら、その学費の高さに透はひどく驚いたものだ。当時の大学の入学金の約10倍以上の取得費用がかかったからだ。
「GG資格取得には、それなりの覚悟がいる」仁は、窓越しに見える夜景を見ながらそう言った。
「今、お店にいる理恵ちゃんが、宝石、ジュエリーの勉強したいと相談されたとき、ジュエリーコーディネーター3級の教本を渡したのがきっかけで、今じゃ1級の資格まで取っている。2級までは、教本と検定試験の費用だけなので、普通のOLでも払えるからな」
美容部員の麗子と結婚した仁は、麗子の友だちの北条理恵が宝石に興味があると聞いて、何の気なしにあげたのがジュエリーコーディネーター3級の教本だった。
続く。
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