宝生家の「宝食」なる日々 〜第1話(1-5) ヒカルのジュエリーコーディネーター3級合格祝〜
仁(ひとし)がプリンが苦手になったのは、学生時代のアルバイトが原因だ。仁は、友人からバイト代がもらえたうえに「まかない」でお腹いっぱいおいしいものが食えるという誘いに乗っかって、梅田の百貨店の食堂部でアルバイトをすることになった。
パーラーと大食堂の洋食を手伝うように部長にいわれ、毎日、洗い場と簡単な仕込み補助に明け暮れることになった。その当時、パーラーのホットケーキと大食堂のカレーライスは人気メニューだった。
パーラーでは、プリンとババロアを定期的に仕込んでいた。ただ、思ったより売れ行きが芳しくなく、賞味期限ギリギリになると、残った商材は廃棄処分となる。当時も、巨大な冷蔵庫があり、仕込み期日をバットに張り付けていた。
パーラーの主任は、廃棄期日が近づくと、「宝生君、プリンとババロア、廃棄が近いから、処分するか、食ってもええぞ」と声をかけてくれる。
当時、プリンといえば、結構高価で、勿論百貨店で出すプリンは本格的なものだ。ただ、いくら美味しくても、プリンを5個も10個も、ババロアを羊羮1本分も食えるものではない。
最初、「役得」とばかりに、プリンを3個から5個、ババロアを羊羮1本分を平らげていた仁も、さすがに、それが続くと辟易としてきて、ほとんど廃棄にしていた。
いくら美味しくても、プリンやババロアをお腹いっぱい食べるものではない。
それ以来、仁は、プリンとババロアは苦手になったのである。
つづく。
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