ジュエリー業界にとって、これからの顧客と商品
「プチセレブ」、「コオヤジ」、「団塊の世代」は、可処分所得のある有望な顧客層です。その団塊の世代を命名した堺屋太一氏は、マリリン・ファーガソン著「アクエリアン革命」の訳者としてもその名を知られています。アクエリアンというのは、「透明の知性」を持った人々のことで、社会や環境の様々な歪みに対して率先して是正していこうとする集団を形成し、ある種の社会革命を起こすであろうと著者は予見しています。
それでは、社会や環境の歪みとは、一体なんでしょう。宗教の違いからくる民族闘争や戦争、テロ活動は、一向に減りません。資本主義社会が生み出した貧富の差は、先進国と途上国というニ軸だけで収まる問題ではありません。
環境破壊は、大量生産、大量消費のツケ、便利さへの追求のみを考えてきた反動で起きた問題です。
かつて、資本主義社会の富裕層は、大量画一的生産者、大規模流通業者で形成されてきました。しかし、今はどうでしょう。IT関連業者、バイオ、ナノテク業者、エコ関連業者など知的財産を駆使した企業の躍進が目立ちます。ガムシャラ、モーレツから知的創造、冷静な判断への移行。破壊から共生へ。
これからは、「知的生活者」の時代になるでしょう。メーカーもエコを意識しない生産体制、姿勢では、ユーザーからの支持を失います。知的生活者は、アクエリアスな知性を持ったひとが多いのではないでしょうか。環境に配慮した生活者、LOHASやスローライフは、これらの人々から発信しています。
ジュエリーに対する考え方も変わってきています。宝石、ジュエリーに対する財産的な価値は、オークションにかけることができるような高価なアンティークジュエリー以外は、認めていない、期待していないと思います。バブル時期に買った宝石を買い取り業者に持っていっても、特定のブランド品以外であれば、買った当時の価格の五分の一、十分の一ぐらいになってしまうでしょう。
知的生活者が、富の象徴として宝石、ジュエリーを購入することは少ないと思います。華美なジュエリーなどで身を着飾ることもないでしょう。映画スターがセレブとしてパーティーに招待された時、高価なブランドジュエリーをつけるのはプロモーションの一環です。それは、非日常な瞬間です。知的生活者は、そんなことに同調しないでしょう。
最近のジュエリーの傾向として、「花鳥風月」をモチーフにしたものが多くなり、優れた作品は売れているようです。しかも、身に着けるにしては大きすぎるものです。工芸品、美術品のように、ジュエリーを観賞する対象、こころの癒しの対象といて家に置いておく、そんな傾向を感じます。
花鳥風月のような古典的なモチーフの対極として、コンテンポラリージュエリーのような近代アートを彷彿させるものも価値を認められるようになるでしょう。
宝石、ジュエリーを「美への憧憬」の対象として買ってくれることは、ジュエラーとして願ってもないことです。ダイヤモンドの4C基準に代表されるチャート表は、価値判断のひとつの目安です。宝石の美的基準のひとつに過ぎません。美術的、工芸的、造形的な価値のあるもの、その価値を説明できるものがこれからも引き続き売れることでしょう。
さらに宝石に求められることは、理論的な説明がつくこと、つまり、ごまかし、まやかしの商売は通用しなくなることです。知的生活者は、美的価値を認める一方、理論的根拠を重要視します。これからの商売に、情報開示は、避けては通れないものになりました。陶芸品は、産地や土の種類、作家などはっきりしたものに価値を見出します。宝石・ジュエリーだけが特別ということにはなりません。
ジュエラーが成功するためには、富裕層を形成する知的生活者に対し、理論的根拠と美的優位性のある宝石、ジュエリーを継続して提案し、販売するということではないでしょうか。
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