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海外に活路を・・・は、机上の理想論

 最近、私が長くからお付き合いのあるメーカー幹部の方や友人のジュエリーデザイナーから、「これからは海外に活路を見出すべきか」というご質問があり、意見を求められます。

 答えは、「ノー」です。国内で外資ディーラー会社や海外ブランドに太刀打ちできないと見て、その矛先を海外に向ける・・・それが実現可能、出来得る戦略なのでしょうか。

 ジュエリーのインターナショル市場を押さえているユダヤ人、華僑、印僑とのネットワーク、コネクションがあるのでしょうか。

 これから、イタリア・ビチェンツァ、香港、バーゼル、JCKなど国際的フェアーに出展するとして、自社にそれに見合う戦略的商品はありますか。

 さらに、一番問題なのは、成果が上がる(であろう)までの数年間の財務計画は確立しているのかということです。中期的な資金が安定的に続かないような財務体質では、戦争(外地)に行って、後方支援体制が手薄で、すぐに砲弾や食料物資が枯渇し、前線で根性や大和魂だけで戦ってきた旧日本陸軍の体制と同じようなものです。

 実店舗の売上が芳しくないので、ネットショッピングに活路を見出そうと楽天などに出展して、さしたる成果があがらないジュエリーショップのオーナーと同じような思考形態です。

 私は、このジュエリー業界に一番欠けていることは、マーケティングセンスではなく、「プランニング」的戦略思考の欠如だと思っています。スケジュール管理や段階的、計画的ステップアップが近代ビジネスには欠かせない要素です。それは、スポーツの世界でも同様です。

 野球を例にすれば、だれもがすぐ3割打てるわけがなく、プロ入りしていきなり年間10勝できる投手は天賦の才を持った稀有な天才のみが成し得ることで、それを数年連続で達成できる投手がチームのエースと呼ばれるのです。

 まずは、ワンシーズン持続して戦える体作りが基本です。もし、それが既にできているようであれば、戦いの前線(一軍)に上げるべきでしょう。

 日本野球でそこそこの活躍だった野手や選手寿命が終わりかけている投手が大リーグで活躍できる可能性が余りないように、海外ジュエリーに押されっぱなしの国内ジュエリーメーカーが国際市場で認められることはまずありえないと考えるべきでしょう。

 さらに、日本のメーカーや卸会社の自己資本比率はとても低く、ほとんどの会社が銀行などの金融機関からの借金で成り立っています。それも、ここ10年来続く業績の落ち込みなどで、銀行からいつ新規借り入れにストップがかかるかわからない状況では、海外進出の先が見えてきません。

 このような体質で、単独で海外に進出するなど危険極まりない計画だと思います。

 もし、幕末における「薩長連合」のように、日本の有力な会社同士が合併するなどドラスティックな体制変化があれば話しは別ですが。フッション業界では、過去、オンワードと樫山が合併して成功していましたね。

 現状で考えられることは、日本で外資サイトホルダーの傘下に入る会社がこれからますます増えることでしょうか。

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プランニング」カテゴリの記事

コメント

びっくりされるかもしれませんが、海外でも日本でも
仕事をしたければ単純に電話やメール、又は商品の写真やサンプルなどを送って単純にアポイントを取るだけで商品が売れる物だとバイヤーに認められれば直ぐに取引ができるところが多いのです。要はやる気とセンス(ジュエリーのセンスとビジネスセンス)とちょっとの語学力です。

日本人でもアメリカやヨーロッパの有名なブランドにデザインを売っている友人もいますし、私自身も日本を代表するブランドやフランスのC社、イタリアのB社などとお取引しています。本当に素敵で良いものでしたらオークションなどで売買したり多少の損をしても名前を売って有名になると言う手もあります。ユダヤ人、中国人、インド人に限らずプロは絶対儲かる物であれば初めて取引する知らない相手からももちろん買います。

現に私が去年イタリアのB社で仕事をしていた時にすっごいダサい感じのデザイン画を見せに来たギリシャ人がいました(苦笑)なんらかのアポを断れない理由があったのかも知れませんが、自社デザイナーだけに頼らずに良い物があるかも知れないから、来る物は拒まずに見て良いものがあれば買うという姿勢は凄いと
思いました。

投稿: victorianbox | 2008/06/28 01:58

victorianbox さん、反論のコメントありがとうございます。victorianbox さんは、すでに海外の百貨店の仕切れ担当キーマンをご存知であったり、ユダヤ人とのネットワークを既に持ってられるのですね。

 そういう方が是非、こういう時期に、日本のメーカー、デザイナーの「水先案内人」」「コーディネーター」としてご活躍の場を広げてもらえればと思います。

投稿: 仁醒 | 2008/06/28 00:55

こんばんわ。初めてまして

>>海外に活路を・・・は全然机上論ではないと
思います。私は日本と海外の両方でジュエリーの
仕事をしていますが、海外では商品やプライスがユニークでバイヤーの目に留まれば仕事は直ぐに出来ます。いきなり大金をはたいて大きなフェアに出展しなくてもアポイントを取れば結構有名なお店やデパートも商品は見てくれますし彼らも常にアンテナを張って
新しい物は探しています。只、かなりテイストが違うのでマーケティングがとても重要です。あとはユダヤ人とのビジネスに慣れることも必要ですがなれ過ぎない事も必要です。こちらでは考えられないような悪い
人が宝飾業界には多いので注意が必要です。

投稿: victorianbox | 2008/06/26 23:40

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