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2019年5月30日 (木)

ルネッサンス・ジェム 「Aiko-cho」ジュエリーデザイナー山崎藍子の世界

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写真撮影 辻 直之

大阪を拠点に活躍しているジュエリーデザイナー、山崎藍子氏。そのアトリエは、阪急梅田駅から10分ほど歩いたところにある厳重なセキュリティ体制がとられているタワーマンションの一室にある。

ルネッサンス・ジェムのオーナーでありジュエリーデザイナーである山崎藍子氏は、幼年期ロシア国立ワガノワ・バレエ学院に短期留学。そのころのバレエへのオマージュが山崎藍子氏の初期の作品の原点である。しなやかでありながら力強いバレエのエレガントな輝きを巧みにジュエリーに取り入れた山崎藍子ならではのコレクション「エトワール」「ポアント」「コールト」「アントルシャ」を創りあげた。

2007年、イタリア、イギリスより招待を受け、現地のジュエリーショーや制作現場、文化施設を視察。

20099月、京都清水寺成就院にて個展、香港ジュエリー&ジェムフェアーに作品を出展。

20103月、BASEL WORLD6月オランダ美術館、9月香港ジュエリー&ジェムフェアーにジュエリーコレクションを出展、と活動の場を海外に広げていった。

2011年秋発行の世界で最も歴史ある英国宝石学協会の季刊誌である「Gems&Jewellery」に、香港ジュエリー&ジェムフェアーに出展した「山崎藍子コレクション」の蒔絵を施した真珠の取材記事が以下のように掲載されている。

「9月の香港ジュエリーショーは、巨大で多数のジュエリー出展社、そして鑑別機材などの関連企業の出展があるなか注目を浴びるのは困難な状況。そんな中、日本の伝統技法(蒔絵)によって装飾された真珠が目を引いた」

201511月、高野山三宝院にて個展を開催。高野山の寺院で宝飾品の個展を開くとは、驚きだ。

さて、蒔絵について少し触れておく。

平安期から伝わる蒔絵技法。蒔絵の素地である漆には悪いものを寄せ付けない強い力があると信じられている。漆を分泌するウルシノキが傷つくと漆の原料となる樹液をその箇所に分泌する。その樹液は乾燥するとどんな酸にも溶けない強固なものに変化する。

日本の伝統工芸を未来に紡ぎたい。そんな強い思いで蒔絵に魅せられた山崎藍子氏は、加賀の伝統工芸・蒔絵師松山武司氏と組み、作り上げた独創的な蒔絵宝飾コレクション。そのひとつに真珠に蒔絵を施した作品がある。素材となる真珠が蒔絵によってオリジナリティ溢れる芸術的な造形物になっている。

ヨーロッパの宝飾工芸視察から帰国したあと、日本の伝統工芸に触れ、日本独自の美への憧憬が芽生えたと山崎藍子氏は言う。

20194月、毎日新聞旅行は、「宝飾デザイナー・山崎藍子さんと行く蒔絵特別体験と北陸2日間」という旅行企画を毎日新聞を通して募集。蒔絵宝飾のデザイナーとともに加賀の懐石料理を堪能し、金沢のお寿司に舌鼓を打ち、山中漆器技術センターにおいて、蒔絵宝飾作りを体験できる旅行プランは、他にはない特別感のある体験型旅行として参加者に好評だったようだ。

さて、コーヒー業界では、産地と品質にこだわり、コーヒーの挽きたて、淹れたてをお客様に提供するスペシャリティコーヒーがサードウェーブとして注目され、またビール業界では、クラフトビールを扱うお店が同じくサードウェーブとして人気を集めている。

ジュエリー業界において、日本の伝統技法を宝飾品に融合させることにより新たなジュエリージャンルを創り出していくムーブメントは、まさにジュエリーのサードウェーブと言えないだろうか。

写真家として、主に海外で絶大なる評価をうけ、故郷鳥取県大山のふもとに「植田正治写真美術館」を持つ、故植田正治氏は、フランスでそのスタイリッシュでしかも温かみのある独特な作風が「Ueda-cho(植田調)」として認められている。

ジュエリーにバレエのしなやかさと強さを吹き込み、日本の伝統技法を宝飾に融合させようとしている山崎藍子氏。その作風が「Aiko-cho(藍子調)と評価されるような独自の存在になりつつあると、私は感じている。

http://www.renaissance-gem.jp/

 

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